薬を塗るだけで歯の色が変わる。そう聞くと、表面を削っているのではないか、あるいは白い塗料で覆っているのではないかと考えたくなります。原理が分からないものにお金を払うことに抵抗を感じる方も多いところです。
実際に起きているのは、削ることでも覆うことでもなく、歯の内部にある色のもとを分解することです。この一点さえつかめば、人工物が白くならない理由も、人によって届く白さが違う理由も、時間が経つと戻る理由も、すべて同じ説明でつながります。順を追って見ていきます。
歯の色は「表面」と「内部」で決まる
まず出発点として、歯が黄ばんで見える理由は2つに分かれます。
表面についた着色
歯の表面はペリクルという薄いたんぱく質の膜で覆われています。この膜に、コーヒーや紅茶、赤ワイン、カレーなどの色素が付着したものが、いわゆるステインです。
これは歯そのものの色ではなく、上に乗っているだけの汚れです。したがって落とせば元の色に戻ります。 歯科医院でのクリーニングで対応できる範囲がここにあたります。
内部の色
もうひとつが、歯そのものの色です。歯の外側はエナメル質、その内側は象牙質という構造になっています。エナメル質は半透明なので、内側の象牙質の色が透けて見えます。象牙質はもともと黄色みを帯びていて、加齢とともにエナメル質が薄くなると、その黄色みが強く見えるようになります。
さらに、飲食物由来の色素が長い時間をかけてエナメル質の内部にまで取り込まれることもあります。この内側の色は、表面をいくら磨いても変わりません。 ホワイトニングが働きかけるのは、こちらです。
原因の切り分け方は歯の黄ばみを取る方法|原因別に「落とす・薄くする・覆う」で整理にまとめました。
薬剤が働く順番——浸透して、分解する
内部の色に届かせるために、薬剤は次の順で働きます。
第一に、薬剤が歯の内部へ浸透します。 エナメル質は緻密に見えて、実際には分子レベルの隙間を持っています。塗布された薬剤はここを通ってエナメル質から象牙質側へ入っていきます。
第二に、薬剤が分解します。 歯の表面やその内部で薬剤が分解すると、反応性の高い酸素(活性酸素)が生じます。これが実際に働く主体です。
第三に、色のもとが切断されます。 着色物質は、光を吸収して色として見える構造を持っています。二重結合が長くつながった構造で、この鎖が長いほど濃い色に見えます。活性酸素はこの鎖を断ち切ります。
鎖が短く切られると、その分子は光を吸収しにくくなります。分子そのものが消えるわけではなく、色として見えにくい形に変わるというのが実態です。塗料で覆っているのでも、表面を削り取っているのでもありません。
歯の構造は保たれたまま、内部の色だけが薄くなる。これがホワイトニングの中心にある働きです。歯質への影響についてはホワイトニングで歯がもろくなる?起きることと起きないことを分けて解説で整理しています。
使われる薬剤は2種類ある
歯科医院で扱われる薬剤は、大きく2つです。
| 薬剤 | 主に使う方式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 過酸化水素 | オフィスホワイトニング | 分解が速く、短時間で働く。歯科医師の管理下で扱う |
| 過酸化尿素 | ホームホワイトニング | 分解がゆるやかで、長い時間をかけて働く |
この2つは別物のようでいて、実は地続きです。過酸化尿素は、分解すると過酸化水素になります。 生じる過酸化水素の量はおよそ3分の1で、10%の過酸化尿素なら過酸化水素にしておよそ3%強にあたります。
ここから、濃度と時間の関係が見えてきます。ホームホワイトニングで過酸化尿素10%なら1日2時間程度、20%なら30分から1時間程度というように、濃度が高いほど装着時間は短く設定されます。 濃度と時間は別々の指示ではなく、セットで設計されているということです。
だから「濃い薬剤を長く使えば速い」わけではありません。設計された組み合わせから外れると、負担だけが増えます。濃度の読み方はホームホワイトニングのジェルとは?濃度の意味と保管・期限の考え方で詳しく解説しています。
費用に関する注記(自由診療について)
ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。治療内容は薬剤による歯の漂白で、費用は歯科医院や方法によって異なります。主なリスク・副作用として、施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります。無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療のむし歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります。効果の感じ方や必要な回数には個人差があります。
光を当てるのは何のためか
歯科医院で施術中に光を当てるのを見ると、光そのものが歯を白くしているように思えます。
そうではありません。光の役割は、薬剤の分解を後押しすることです。分解が進めば活性酸素も多く生じるため、短い時間で反応を進められます。
つまり光は促進役であって、主役は薬剤です。光を当てない方式でも、時間をかければ同じ働きは起こります。ホームホワイトニングが光なしで成立するのは、そのためです。
施術直後の白さの一部は一時的
もうひとつ、仕組みを知らないと取り違えやすい現象があります。
薬剤が働いている間、エナメル質の表面からカルシウム成分が一時的に溶け出し、表面が細かく凹凸のある状態になります。すると光が乱反射し、すりガラスのように内部の色が見えにくくなります。この見え方は、色素が分解された結果ではありません。
表面は時間の経過とともに元に戻ります。したがって、施術直後に見えている白さは数日で落ち着きます。ここで「戻ってしまった」と受け取ってしまいがちですが、正確には落ち着いた後の色が、その回の結果です。
比べる相手は施術直後ではなく、施術前の色になります。色を確認しながら進めるなら、同じ条件・同じ時間帯で見るようにすると判断を誤りません。色の見方はホワイトニングの頻度はどのくらい?日数ではなく色で決める考え方にまとめています。
仕組みが分かると説明できる3つのこと
ここまでの原理から、よくある疑問はすべて説明できます。
人工物が白くならない理由
詰め物、被せ物、差し歯、インプラントの上部構造は、薬剤では色が変わりません。
理由は単純で、これらの材料には分解の対象になる着色分子がないからです。活性酸素が働く相手がいないため、何も起こりません。天然の歯だけが明るくなるので、進めるほど人工物との差が目立つことになります。
到達点が歯の側で決まる理由
どこまで白くなるかには個人差があります。これは薬剤の性能の差ではなく、もともとの象牙質の色とエナメル質の厚みの差によるものです。
薬剤ができるのは、取り込まれた色素を分解することまでです。象牙質そのものの色を別の色に変えることはできません。エナメル質が薄ければ、内側の色は依然として透けて見えます。回数を重ねても、届く範囲はこの構造で決まっています。
白さが戻る理由
色素が分解されても、歯の構造は元のままです。したがって、新しく飲食した色素は同じように取り込まれていきます。
加えて、施術の後しばらくは表面のペリクルが失われた状態にあり、色素が付きやすくなっています。施術や装着の後2〜3時間程度、色の濃いものと酸性のものを避けるよう案内されるのは、この時間帯を守るためです。
白さの持続はホームホワイトニングで6ヶ月から1年程度、オフィスホワイトニングで3ヶ月から1年程度が目安になります。永続しないのは仕組み上そうなるということで、何かがうまくいかなかったわけではありません。
費用に関する注記(自由診療について)
ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。治療内容は薬剤による歯の漂白で、費用は歯科医院や方法によって異なります。主なリスク・副作用として、施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります。無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療のむし歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります。効果の感じ方や必要な回数には個人差があります。
ホワイトニングの仕組みに関するよくある質問
歯を削っているのではありませんか
削っていません。働いているのは、歯の内部に取り込まれた着色分子の構造を切断する反応です。歯を覆っているエナメル質や象牙質そのものを取り除く処置ではないため、形が変わることもありません。
しみるのは仕組み上避けられないのですか
避けられないものではありませんが、起こりうる理由は仕組みの中にあります。ひとつは表面のペリクルが一時的に失われ、刺激が届きやすくなること。もうひとつは薬剤が象牙質の細い管を通って神経側へ刺激を伝えることです。多くは24時間から48時間程度で落ち着きます。濃度や装着時間、間隔の調整で軽くできる場合もあるため、処方元に相談してください。仕組みと対処はホワイトニングで知覚過敏になるのはなぜ?2つの経路と経路別の対処にまとめています。
どこまで白くなるか事前に分かりますか
正確な予測はできませんが、見当をつけることはできます。現在の色をシェードガイドで記録し、エナメル質の厚みや象牙質の色、人工物の有無を診察で確認すれば、どのあたりまでが現実的かは説明を受けられます。白さの実感が出るのは開始から2週間程度、目標に近づくまでは2週間から3ヶ月程度が目安です。
福岡で仕組みから説明を受けたい場合はどうすればいいですか
診察のときに「自分の黄ばみは表面の着色か、内部の色か」を確かめてもらうのが出発点になります。原因が分かれば、必要な方法も、届く範囲も具体的に聞けます。オンラインでの診察に対応している歯科医院なら、通院の回数を抑えながら進められます。
まとめ|浸透して分解する、それだけのこと
ホワイトニングで起きているのは、薬剤が歯の内部へ浸透し、分解して生じた活性酸素が着色分子の構造を切断する、という反応です。削ることも覆うこともしていません。
過酸化水素と過酸化尿素は地続きの薬剤で、過酸化尿素から生じる過酸化水素はおよそ3分の1にあたります。濃度と装着時間はセットで設計されているため、外れた使い方をしても速くはなりません。
そしてこの原理から、人工物が白くならないこと、到達点が歯の構造で決まること、白さが永続しないことが、すべて同じ説明で導けます。仕組みを押さえておけば、自分の歯に何がどこまで起こるのかを診察で確かめられます。
福岡博多矯正歯科のホワイトニング
通院の負担を抑えたい方に向けて、オンライン診療と自宅でのケアで進めるホワイトニングをご用意しています。3Dスキャンで採得した歯型からオーダーメイドのマウスピースを作成し、歯科医師の診断のもとでホワイトニングジェルと知覚過敏抑制剤をご自宅にお届けします。
- 診察はオンラインで完結。マウスピースをお持ちの方はご来院いただく必要がありません
- 歯型に合わせたオーダーメイドのマウスピースで、薬剤を歯の隅々まで行き渡らせます
- しみる症状に備えた知覚過敏抑制剤を同梱。経過は24時間LINEでご相談いただけます
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング(国内で承認された薬剤を使用)
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:使用中や使用後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療のむし歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・詰め物・被せ物・差し歯などの人工物は薬剤では白くなりません。効果の感じ方や必要な期間には個人差があります
